先月、ロマン・ポランスキー監督の映画 J 'accuse を見ました。
2020年にセザール監督賞を受賞しましたが、彼は過去に多くの少女たちに性的虐待を加えていたことから、賞を与えることに怒った女優たちが授賞式をボイコットするという騒ぎになった、曰く付きの映画です。
主人公はドレフュスでなく、事件の闇に気がついたピカール中佐です。
「文書改竄」「証拠捏造」「巨大権力」なんか、これ全部、ここ数年の日本の問題そのもので、情けなくなります。
ドレフュス事件のことは学校で習ったくらいで、経緯をよく知らなかったのですが、以前、レッスンでゾラの本を読んだ時に、関連する資料の一つとして、コチラの動画を紹介され、興味を持っていました。
簡潔にまとまっていて、経緯がとてもわかりやすいです。
あらすじ
ドイツ大使館で働く掃除婦のバスティアンは、実はスパイ対策で雇われた女性で、掃除のたびに、ゴミ箱の中身をアンリ少佐に渡しています。
1894年9月、のちにBordereauと呼ばれる、日付も名前もない手紙を見つけます。それは6つに破られていましたが、ドイツ軍へ当てた機密文書でした。
すぐにドレフュスに疑いがかけれます。
19世紀終わりのフランスはアルザスとロレーヌを失い、ナショナリズムと反ユダヤ主義が跋扈しており、アルザス出身でドイツ語が使え、しかもユダヤ人のドレフュスは犯人に仕立て上げるのにぴったりだったのです。
手紙の筆跡と彼のとは異なっているのは明らかなのに、筆跡鑑定者は理屈をつけて押し通します。
捕まったドレフュスは自白と自殺をすすめられますが、どちらも拒否。
弟のマチュー・ドレフュスは優秀な弁護士を雇います。何の証拠もないのですから、無罪になりそうなところを、検察側はでっち上げの証拠文書を振り翳します。これはのちに中身がなかったことが明らかになります。
結局ドレフュスは永久島流と軍位剥奪という過酷な状況となるのですが、彼の上司であったピカール中佐は、エステラジー少佐がBrodereauと同じ筆跡であることに気が付き調査を進めます。
また、マチューの元には多くの協力者も現れ、特にすでに有名作家となっていたゾラが J'accuse という文書をオーロール紙に発表し、ドレフュスを陥れた関係者を名指しで糾弾します。
ゾラは軍部を侮辱した罪で有罪となりますが、彼の文章発表の効果は大きく、1899年8月に再審が開かれます。有罪は変わらないものの、情状酌量で禁錮10年となり、1899年9月21日には恩赦で釈放、1906年に有罪を取り消され、軍に復帰。1935年に波乱に満ちた生涯を終えます。
ドレフュス事件はフランスにとっても非常に大きな爪痕を残すことになります。
反ユダヤ主義の激化と、フランスを二分する親ドレフュスと反ドレフュス。
裁判を通して生まれた「知識人」は人権擁護連盟立ち上げの動きにつながりました。
また、この事件をきっかけに、ユダヤ人国家を作る動き(シオニズム運動)が生まれ、それがイスラエルとなったのです。
語句
l'état-major 参謀本部
faire mine de + inf. 〜ふりをする
Chaque jour, elle fait mine de vider les pouvelles.
faire état de qn/qc 〜を援用する、〜を報告する
Le Bordereau fait état de documents militaires confidentiels français qui doivent être transmit à une puissance étrangère.
brandir 〜を振りかざす
L'armé a brandi alors un dossier secret.
une diffamation 中傷
Zola est comdamné pour diffamation de l'armé.
les circonstances atténuantes 情状酌量
この事件でのZolaが果たした役割は非常に大きかったのですね。
今、Au Bonheur des Dames を再び読み返していますが、ますます彼の作品に興味が湧きます。次はNanaを読もうかな。
こちらは2時間もののドキュメンタリー。より詳しく知りたい方はどうぞ。自動字幕ありです。
今朝ブログを更新した後に、こちら↓のテレビ映画(フルバージョン)を見つけました。まだ見てませんが、コメントから察するに、かなり良さそう。