昨年、DALF C1を受けた後に挑んだ初ゾラ。
一年後に読み直してみました。最初は見落としていたことに気がついたりするので、気に入った本は時間を空けて二度読みします。
やっぱり素晴らしい本だわ。面白い!
今回は、こちら↓の動画を紹介します。
要約は多分力尽きて、そんなに丁寧にできないと思うのですが、このLemon Juneさん、口がすごくはっきり動くので、見てるだけでも発音の良い勉強になります。
内容については以前のブログに書いているので、それ以外の部分をまとめてみます。
時代背景
Avant de rentrer dans le vif du sujet, une petite mise en situation s'impose.
本題に入る前に、この作品の背景に触れておきましょう。
この作品は、20巻からなるルーゴン・マッカール叢書(第二次帝政期から1850年代)の11番目の作品です。
19世紀初めのパリは、大型店舗はまだなく、手袋は手袋やさん、帽子は帽子屋さん、各専門店に行くのが常で、選択肢は非常に少なかったのです。
La gamme est restreinte. 種類は限られ
Les prix ne sont pas affichés. 値札はついておらず
Le marchandage est inévitable 値切ることは当たり前のこと。
Le prix est fixé à la bobine du client 価格は客の様子(顔)で決められていました。
現在の百貨店の先駆けとなるLe Bon Marchéを作ったのがアリスティッド・ブシコー(Aristide Bouchicaut)です。
19才で田舎から出てきた彼は、それまでとはちょっと違ったmagasin de nouveautés(さまざまな商品・値札がついている・美しい陳列)で働き始め、
grimper les échelons jusqu'à atteindre le rang de responsable
幹部にまで昇進します。その後、Le Bon Marchéで働いていたポール・ヴィドと出会い、この店にモダンなセンスを吹き込み、現在の形態にしていくのです。
Carnets d'Enquêtes: ゾラの調査手帳
ゾラが本を書くにあたって綿密な調査をした記録です。
本作を書くにあたっても、手帳を手に、連日取材に訪れたそうです。それゆえに、当時の店員たちの劣悪な労働環境や社員食堂の様子などが丁寧に作品の中に盛り込まれています。
食べるのにも困るほどの低賃金や
se faire virer sans ménagements : 躊躇ない解雇など
私(Lemon)がこの作品を好きなとこ
登場人物の微妙な心持ち、華やかなデパートの裏に隠された悲壮な諸々のことが、繊細で的確な言葉で表現されています。
また、さまざまな場面、登場人物と共に、デパートで扱われる色とりどりのスカーフや美しい装飾が絵画のように描写されていると思います。
ドゥニーズが駅に降り立つのその場面から、すっかり自分もそこにいて、自分の目の前に大都会が広がっているような気持ちになり、作品に入り込んでしまいました。(←Lemonさん、超感情込めて語ってます。^^)
ゾラの作品ではfoule (人混み・雑踏)が描かれることが多いのですが、例えば「ジェルミナール」の中では労働者の荒々しい雑踏。
一方、この作品では異なった社会階層の人たち(庶民も公爵夫人も)一様に煌びやかなこのデパートに魅せられ、同じ雑踏の中で時を共有しているのです。それは画期的なことでした。
万引きしちゃうご婦人が出てくるのも滑稽です。今では窃盗症と言われるこの病が見られるようになったのは、デパートの出現とともにあるそうです。
真実を書くゾラ
ドゥニーズは職場でいじめにあったり、後半でも地位のある女性に嫌がらせを受けたりと、いわゆる「女の諍い」場面がよく出てきます。
男性作家はそれを上から目線で小馬鹿にして書くことが多いのですが、ゾラは深刻な問題としてとらえ、表現しています。
また、近代化の波と、それに抵抗できない現実を、時代の証人として正しく書いているところが大好きです。
以上、非常に大まかな要約です。
それにしも、一人で見て、わかった気になっていても、いざまとめようとすると、こんなに大変なんだ、と実感。
いつまで続くかなあ。^^