愛と平和とフランス語

ほとんど自分のためのフランス語学習記録&ときどき時事問題

La Carte postale

ここ最近で、一番のおすすめ本となりました。

 

 

 

この表紙に載っているハガキが、著者アンヌの母親(レリア)の元に届いたのは2003年のことでした。その、差出人不明のハガキに書かれていたのは4人の名前。1942年にアウシュビッツで亡くなったLéliaの祖父母と叔父と叔母でした。

 

家族でそのハガキを囲んで話し合ったものの、誰が何のために出したのかは分かりません。

 

それきりになるところだったのですが、20年近く経って、アンヌの6歳の娘が

 

「おばあちゃんはユダヤ人なの?ママは?じゃあ、私も?学校のみんな、ユダヤ人が好きじゃないみたいなの」

 

と口にしたことから著者はこのハガキと家族の歴史を調べたくなります。

 

 

詳細な調査から描き出されたアウシュビッツでの様子やそこに至るまでの日に日に不穏になる社会の空気、家族で一人だけ生き残ったミリアム(レリアの母)の逃避行、それに関わる人々の人生、戦後、どれもが非常にリアルで、私もその時代に入っていったような気持ちにさせられます。

 

 

570ページありますが、使っている言葉がそれほど難しくなく、一文も短めなので、ぐいぐい読めます。何よりも内容に惹きつけられます。(内容が内容だけに、面白い、という言葉を使うことを躊躇しました。)

 

 

ただ、最初は固有名詞がこんがらがらないように、メモ書きしておきました。最初でつまづくと辛いですからね。

 

 

ハガキの差出人はなかなかわからず、最後の方まで行って、「私、もしかして読み落とした?」と不安になったのですが、胸に迫る真実が残されていました。

 

 

翻訳本も出ています。

 

でも、フランス語学習者には、ぜひまず原書で読んでほしいです。

 

上記で日本語試し読みができますが、それも読まない方が良いと思います。私は今朝見つけて読んでみたのですが、レリアの言葉づかいが私のイメージと違っていて、ちょっとショックでした。

 

 

私の読み込みが足りなくて、彼女の人柄や雰囲気を見誤ったのかもしれないので、また数ヶ月後に読み直してみようとは思っていますが、他の方のご意見もぜひ聞いてみたいです。

 

 

↓こちらで大体のフレームがわかります。

 

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A la faveur d'un événement que je raconte, dans le livre, une chose qui s'est passé à l'école avec ma fille, je me suis souvenue de cette carte postale à laquelle je n'avais pas pensé pendant 20 ans.

Et j'ai voulu absolement savoir qui nous l'avait envoyée, alors pour cela, j'ai mené une enquête.

... J'ai résolu cette enquête au bout de trois ans.

 

【本に書いた、娘の学校でのエピソードから、この20年考えてこなかったこの葉書のことを思い出したのです。誰が出したのか、とても知りたくなって調査を始めました。・・・3年後、それが実を結びました。】

 

 

↓こちらでは、冒頭、アンヌ自身の朗読が少し聞けます。

 

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Présentatrice : L'antisémitisme ne se résume pas à ces actes visibles, il est diffus. Il est aussi dans les agressions verbales ou sur internet. Qu'est-ce qu'il faudrait mettre en place pour lutter contre ces actes antisémites en 2021 ?

 

Anne B : Ce qui est sûr, c'est qu'au fur et à mesure où j'écrivias le livre, j'a commencé à l'écrire il y a quelques années, petit à petit les témoins disparaissait, il y a la mort de Simone Veil, la mort de Marceline Loridan, etc... 

Au fur et à mesure, je me disais que c'est important de décrire ce livre parce que nous sommes les petites fille de Simone Veil, de Marceline Loridan...et donc comme eux disparaissent et ne pourront plus témoigner, nous, nous devons continuer de transmettre. 

 

【司会者:反ユダヤ主義は明らかに目に見える形ではなく行われることがあり、浸透しています。言葉での攻撃、インターネット上でもですね。2021年の今、こういった行為に対して何ができるでしょうか?

 

アンヌ・ベレスト: 数年前からこの本を書いている中で気づいたのですが、この間、シモーヌ・ヴェイユやマルセリーヌ・ロリダンが亡くなり、生き証人が次第にいなくなっていいます、これはあきらかです。

 

それと共に、私たちは言うなれば、シモーヌやマルセリーヌの孫であるからこそ、この本を書くことが大切なのだと思うようになってきました。彼らが亡くなり、もう証言ができなくなるのですから、私たちが伝え続ける責務があります。】

 

 

↓こちらはちょっと長めですが、アンヌ自身のこと(ユダヤ人であることを自覚せずに育った)や本の内容(ネタバレはなし)にも少し踏み込んだインタビュー番組です。

 

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アンヌ自身も、ユダヤ人であることをほとんど意識せずに育ち、知ってからも「私はユダヤ人です」と口にできるまでにかなり時間を要したそうです。

 

特に戦後はそれについて口にしてはいけない空気が社会全体にあり、特に信仰生活を送っていない家庭では子供は知らないまま育つと。

 

そんな背景がありながらも、この本を書こうと思ったその原動力は「伝えなければ」という気持ちだと話します。

 

 

Il y a tous moments qui pour moi étaient très difficile et dur à écrire, c'est tout ce qui se passe à Pithiviers, évidemment l'arrivée à Auschwitz et tout le passage du retour des déportés au Lutétia.

D'abord, je me suis posé la question de mon statue. C'est à dire dans quelle mesure, moi, j'ai le droit d'écrire là-dessus.

 

J'ai résolu le problème que je me posais moi-même en me disant les derniers témoins sont en train de disparraître, il n'y aura plus personne pour pouvoir dire et raconter, j'y étais.

Comme ils sont en train de disparraître, il est nécessaire qu'une nouvelle génération arrivent et disent. Voila, ce qui s'est passé. Donc, je me suis autorisé à parler ainsi de Pithiviers, d'Auschwitz et de Lutétia.

 

【ピチヴィエで起こったこと、その後のアウシュヴィッツ、生存者がホテルルテシア(帰還者の一時滞在場所になっていた)に戻ってきた一連の様子、それらを具に書き記すことはとても難しく辛い時間でした。

 

まず、どういうスタンスで書けば良いのかと思ったのです。つまり、どこまで書いて良いのかということです。

 

私はこう考えました。アウシュヴィッツを生き延びた方々も、皆亡くなりつつあります。もう体験を証言したり人に話したりできる人がいなくなってしまう。あ、私がいるじゃない、と。

 

体験者はいなくなっていくのだから、次の世代が彼らに代わって伝えていく必要があるはず、と。こう考えて、私はピチヴィエ、アウシュヴィッツ、ルテシアでのことなどを書くことにしたのです。】